子どもの「お口ポカン」は大丈夫?口唇閉鎖不全と歯並びへの影響、おうちでできるトレーニング

お子さんがテレビを見ているときやゲームをしているとき、ふと顔を見ると、いつも口がポカンと開いていることはありませんか?

「まだ子どもだから」「癖なのかな」とあまり気にしていない方も多いかもしれません。

しかし、普段から唇を閉じることが難しく、口が開いた状態が続いている場合、歯科では「口唇閉鎖不全(こうしんへいさふぜん)」と呼ばれる状態が関係していることがあります。

いわゆる「お口ポカン」です。

お口ポカンは、見た目だけの問題ではありません。お口の周りの筋肉や呼吸、舌の位置などと関係し、状態によっては歯並びや噛み合わせ、お口の乾燥、むし歯や歯肉の健康にも影響する可能性があります。

今回は、

「どうして子どもの口がいつも開いているの?」

「お口ポカンを放っておいて大丈夫?」

「家庭でできることはある?」

といった疑問について、歯科の視点から分かりやすくお話しします。

「お口ポカン」とは?医学的には「口唇閉鎖不全」と呼ばれます

「お口ポカン」という言葉は聞いたことがあっても、「口唇閉鎖不全」という言葉は初めて聞く方も多いのではないでしょうか。

口唇閉鎖不全とは簡単にいうと、安静にしているときに上下の唇を自然に閉じ続けることが難しい状態です。

本来、人は会話をしたり食事をしたりしていないときには、唇が軽く閉じているのが基本的な状態です。

ところが、お口周りの筋力や鼻呼吸の状態、舌の位置などさまざまな要因によって、無意識のうちに口が開いてしまうお子さんがいます。

たとえば次のような様子が頻繁に見られる場合は、一度お口の状態を確認してみてもよいでしょう。

  • テレビや動画を見ていると、いつも口が開いている
  • ゲームや勉強に集中すると口が開く
  • 唇が閉じにくそうに見える
  • 寝ているときに口が開いている
  • 口呼吸をしていることが多い
  • 唇が乾燥しやすい
  • 朝起きると口の中や喉が乾いている
  • 前歯が前方に出ているように見える

もちろん、口が開いているからといって、すべてのお子さんに問題があるわけではありません。

一時的な鼻づまりで口呼吸になっていることもありますし、成長の過程によって変化する場合もあります。

大切なのは、「いつも口が開いている状態が続いているかどうか」です。

なぜ子どもの口がポカンと開いてしまうの?

お口ポカンには、一つだけではなくさまざまな原因が関係しています。

代表的なものの一つが、唇や舌、頬など、お口周りの筋肉の働きです。

唇を閉じるためには、お口の周囲にある筋肉を使います。これらが十分に使えていなかったり、唇を閉じる習慣が身についていなかったりすると、安静時にも口が開きやすくなることがあります。

また、鼻が詰まっていて鼻呼吸がしづらい場合、自然と口で呼吸するようになり、口が開いた状態が習慣化することもあります。

さらに、

舌の位置
歯並びや噛み合わせ
顎の成長
姿勢
呼吸の仕方
鼻や喉の状態

などが複合的に関係している場合もあります。

そのため、「口を閉じなさい」と注意するだけでは改善しないケースも少なくありません。

特に鼻づまりが続いているお子さんについては、必要に応じて耳鼻咽喉科など他の医療機関での確認が必要になることもあります。

お口ポカンを放置すると歯並びに影響する?

保護者の方が特に気になるのが、お口ポカンと歯並びの関係ではないでしょうか。

顎や歯並びは、遺伝だけによって決まるものではありません。

成長期のお子さんでは、唇・頬・舌など、お口周りの筋肉から受ける力も歯並びや顎の成長に関係しています。

歯は、外側からは唇や頬、内側からは舌の力を受けながら、そのバランスの取れた位置に並んでいきます。

ところが、口が開いている時間が長くなり、唇から歯に加わる力が少なくなったり、舌の位置や使い方に偏りが生じたりすると、正常なバランスが崩れてしまうことがあります。

その結果として、

前歯が前に出る
上下の前歯が噛み合いにくくなる
歯が並ぶスペースが不足する
噛み合わせに影響する

などにつながる可能性があります。

ただし、お口ポカンがあれば必ず歯並びが悪くなるという意味ではありません。

歯並びには顎の大きさや歯の大きさ、遺伝的要因など多くの要素が関係するため、お子さん一人ひとりのお口を確認したうえで判断することが大切です。

口が開いたままだと「お口の乾燥」にも注意

お口ポカンで注意したいのは、歯並びだけではありません。

口が開いている時間が長くなると、口の中を通る空気によって唇やお口の中が乾燥しやすくなります。

私たちの口の中にある「唾液」には、とても重要な働きがあります。

たとえば、

食べかすなどを洗い流す
お口の中の酸を中和する
歯の再石灰化を助ける
粘膜を保護する

といった働きがあります。

そのため、口の中が乾燥し、唾液の働きが十分に発揮されにくい状態が続くと、むし歯や歯肉の炎症など、お口のトラブルが起こりやすくなる可能性があります。

「最近、唇がよく乾いている」

「朝起きると口がカラカラになっている」

という場合には、普段どのように呼吸しているかも一度チェックしてみてください。

「口を閉じなさい!」だけでは改善しにくい理由

お子さんの口が開いていると、

「口を閉じて!」

「また口が開いてるよ!」

と声をかけることもあると思います。

もちろん、自分で意識できる年齢のお子さんであれば、声かけがきっかけになることもあります。

しかし、お口ポカンの原因がお口周りの筋肉や鼻呼吸などにある場合、本人が意識するだけでは口を閉じ続けることが難しいことがあります。

何度も注意されると、お子さん自身が嫌になってしまうこともあります。

そこでおすすめしたいのが、日常生活の中に「遊び」を取り入れながら、お口周りを使う機会を増やしていくことです。

今回のコラムでは、ご家庭でも取り入れやすい方法を2つご紹介します。

おうちでできる「お口ポカン」トレーニング① 吹き戻し

一つ目は、昔からあるおもちゃの「吹き戻し」を使った遊びです。

息を吹くと紙の筒がピーッと伸び、息を止めるとクルクルと戻ってくるおもちゃで、「ピロピロ笛」などと呼ばれることもあります。

遊んだ経験がある保護者の方も多いのではないでしょうか。

吹き戻しは、口から息を吹くために唇や頬などのお口周りを使います。

また、「吸う」「吹く」といった呼吸の切り替えを行うことで、お口や喉周囲の機能を使う練習にもなります。

何より、お子さんにとっては「トレーニングをしている」という感覚が少なく、遊びとして取り入れられるのがメリットです。

「誰が一番長く伸ばせるかな?」

「ゆっくり伸ばせるかな?」

などゲーム感覚で行うと、楽しく続けやすくなります。

ただし、小さなお子さんの場合には、誤飲などがないよう必ず保護者の方が見守りながら行ってください。

おうちでできるトレーニング② 紙を使った「吹き飛ばし競争」

特別な道具がなくてもできるのが、紙を使った吹き飛ばしゲームです。

小さな紙を折って机の上に立て、スタート地点から息を「フーッ」と吹いて動かします。

兄弟や親子で、

「どっちが早くゴールまで行けるかな?」

と競争してみてもよいでしょう。

息をしっかり口から吹くためには、唇の形や息の量を調整する必要があります。

何度も遊んでいるうちに、自然とお口周りを使う機会を増やすことができます。

ただし、こうした遊びだけですべてのお口ポカンが改善するわけではありません。

原因によって必要な対応は異なるため、日常的に口が開いている場合には、まず原因を確認することが大切です。

子どもの「食べる・飲み込む・話す・呼吸する」はすべてつながっています

歯科医院というと、

「むし歯を治す場所」

「歯並びを治す場所」

というイメージを持たれる方が多いと思います。

しかし、子どものお口を見るときには、歯だけを見るのではなく、

噛む
飲み込む
話す
呼吸する
唇を閉じる
舌を動かす

といった、お口全体の機能を確認することも重要です。

成長期は、お口の機能や顎が発達していく大切な時期です。

幼い頃から正しいお口の使い方を身につけていくことは、将来の健康なお口づくりにつながります。

特に乳歯から永久歯へ生え変わる時期は、歯並びや噛み合わせが大きく変化します。

定期検診の際に、

「いつも口が開いている気がする」

「舌の位置が気になる」

「歯並びが少し気になってきた」

といったことがあれば、遠慮なく歯科医師や歯科衛生士にご相談ください。

お口ポカンは「早めに気づくこと」が大切

お口ポカンは、痛みがあるわけではないため、ご家庭では問題として気づきにくいことがあります。

しかし、毎日のちょっとした様子を観察すると、サインが見つかることがあります。

おすすめなのは、お子さんが何かに集中しているときの顔を見ることです。

テレビを見ているとき、ゲームをしているとき、本を読んでいるときなどに、唇が自然に閉じているか確認してみてください。

寝ているときに口が開いているか、鼻呼吸ができているかなどもチェックポイントです。

気になる状態が続いている場合には、「まだ小さいから様子を見よう」と長期間そのままにするのではなく、一度歯科医院で相談してみるのも一つの方法です。

原因が分かれば、

お口周りの機能を高める練習が必要なのか
歯並びや噛み合わせの確認が必要なのか
鼻づまりなどについて他科への相談が必要なのか

など、お子さんに合った対応を考えることができます。

まとめ|お子さんの「いつも口が開いている」が気になったらご相談ください

いわゆる「お口ポカン」は、医学的には口唇閉鎖不全と呼ばれ、安静時に唇を自然に閉じ続けることが難しい状態を指します。

原因は、お口周りの筋肉の使い方だけでなく、鼻づまり、呼吸、舌の位置、歯並びや噛み合わせなどさまざまです。

状態が続くと、お口の乾燥だけでなく、成長期の歯並びや噛み合わせなどに影響する可能性もあります。

ご家庭では、吹き戻しや紙を使った吹き飛ばしゲームなど、遊びながらお口周りを使う機会を作ることも一つの方法です。

ただし、大切なのはトレーニングだけを行うことではなく、「なぜ口が開いているのか」を確認することです。

大西歯科医院では、むし歯や歯並びだけでなく、お子さんの成長に合わせてお口の状態を確認していきます。

「うちの子、いつも口が開いているかも」

「口呼吸をしている気がする」

「将来の歯並びが心配」

という方は、定期検診の際にもお気軽にご相談ください。

こちらの記事は、月刊マルータ 9月号にも掲載しております。

皆さま、ぜひご覧ください。